お知らせ

 

 校長   佐々木 進


 愛媛県立松山西中等教育学校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
 本校の前身は、昭和49年に創立された愛媛県立松山西高等学校です。前年の昭和48年に起きた世界的な石油危機の影響によって開校当初はプレハブ校舎しかなく、生徒たちは、荒れた運動場を教職員と一緒に整地するなどしながら、「新しい学校を自分たちで創る」という「開拓者精神」を発揮しました。そして、雨が降ると、トタン屋根のプレハブ校舎がけたたましく鳴り始めるので、これに負けてはならないと教員の声が校舎の外にまで響き渡り、当時は、生徒と教職員が同様に、不自由な思いよりも新たな学校建設への熱気に包まれた毎日であったといいます。
 その後、生徒と教職員が力を合わせて創り上げた松山西高等学校の歴史と伝統を受け継ぎつつ、平成15年に愛媛県立松山西中学校が併設され、平成18年に、中予地域の県立学校で唯一中高一貫教育を行う、現在の愛媛県立松山西中等教育学校となりました。先述の、創立時に育まれた開拓者精神と、高い理想を求めて生徒と教職員が共に汗を流す「師弟同行」の精神は、今も学校のモットーとして様々な教育活動の中に息づいています。
 本校は、1学年4学級で前期課程3年間と後期課程3年間の計6年間を一貫して学ぶ中等教育学校です。「誠実・自学・創造」の校訓のもと、豊かな心と知性を身に付け、高い志を持って、未来を拓く若者を育成する、という教育方針の中で、生徒たちは1年生から6年生までの幅広い年齢集団の中で自分の「学び」を深め、高め合いながら、たくましく成長しています。授業や学校行事、部活動などを通して自らの夢や希望をかなえようと努力している生徒たちの輝きと伸びゆく力を、これからも教職員全員で守り支え続けてまいります。
 
  令和5年4月

ブログ

家庭クラブ機関誌「銀杏」第36号 巻頭言

2024年3月27日 16時55分

 令和5年度の愛媛県立松山西中等教育学校家庭クラブ機関誌『銀杏』第36号を発行しました。巻頭言において、本校の家庭クラブ員の生徒たちに、「銀杏の樹に向けられた思いやり」と題したメッセージを送りました。

 11月中旬、家庭クラブ員の生徒たちが朝清掃をしている様子をうれしく眺めながら登校しました。生徒の皆さんは、正門から正面玄関にかけてそびえている銀杏の黄色く紅葉した落ち葉を集めてくれていました。その銀杏の樹にまつわる話を紹介します。
 本校第8代校長の松岡繁先生は、『創立30周年記念 久万の台 第28号』(2004年3月)に「思い出すこと」と題した文章を寄稿なされ、次のように書かれています。
 「銀杏や楠の落葉高木、常緑高木の新緑が校内を彩るのが印象深かったことを思い出しております。それは、生気みなぎる西高の姿であったのかもしれない。(中略)それらの木々の中でも、私は感銘を受けたある話柄がありました。それは銀杏の根元が高く盛り上がっているので、以前に勤務していた方に尋ねたところ、こういうことでありました。銀杏の生長が遅いので調べてみると、根元に水分が多くて育たない、そこで木を吊り上げて高くし、土を盛ったというものでした。私はこの話を聞くにつけても、草創期の方々の学校を思う心、生徒を思う心が、銀杏の木にも向けられた出来事として、心温まる思いがしたものでした。」
 その根元が盛り上がった樹々の周りで朝清掃をしている生徒の姿を見て、松岡先生が書かれた話を思い出しました。そして、学校や生徒への思いを銀杏の樹にも注いでくださった方々の心に、生徒たちが感謝の気持ちで応えているかのように感じました。
 家庭クラブの4つの基本精神である「創造」「勤労」「愛情」「奉仕」に共通するのは、家庭や学校から地域、社会へと広がっていく人とのつながりの中で、常に思いやりの心を持つということです。かつて、ある年の愛媛県ホームプロジェクトコンクールに提出された作品を一つひとつ見ていった経験があります。どの作品も豊かな発想力と地道な努力が成果となってあらわれたすばらしいものでした。中でも、家族の幸福を願う気持ちを動機としてテーマを設定し、研究をとおして家族の意識が変わり絆も深まったことを報告した作品や、地域の重要課題を自分の課題ととらえ、地域の人たちと連携しながら、高校生の視点で解決策を見いだしたいというエネルギーにあふれた作品などが、特に印象に残りました。
 私たちは皆、一人の生活者として食物や被服をはじめとした生活に必要な知識と技能を習得するとともに、生涯にわたってよりよい人間関係を創る実践力を身に付けていかなければなりません。そのために生徒の皆さんは、家庭科の授業や家庭クラブでの活動を通して、それらを学んでいるのです。
 結びに、機関誌「銀杏」第36号の編集をはじめ、多くの活動に熱心に取り組んでいる家庭クラブ員の皆さんに深く感謝するとともに、本校の家庭クラブ活動の一層の充実と発展を期待しています。

松山西PTA会報「にし」掲載文

2024年3月23日 11時05分

 令和6年3月1日に発行された松山西PTA会報「にし」に、「言葉を届ける」題した文章を寄稿いたしました。

 保護者の皆様には、平素から本校の教育活動に御理解と御協力を賜り、厚くお礼申し上げます。今年で創立50周年を迎えた本校の歴史と伝統の中で育まれた、「開拓者魂」と「師弟同行」の精神が息づく教育活動に一層取り組んで参ります。
 さて、授業を受け持たない私は、式辞や学校行事でのあいさつなどの機会を、生徒に語りかけることのできる貴重な授業時間だと思い大切にしています。話す内容は式や行事に応じて異なるものの、繰り返し伝えていることの一つは、何かに取り組むときや人と向き合うときの、心の持ち方や取り組み方、言わば「姿勢」についてです。基礎・基本をいつも意識し、小さなことやさりげないことを大切にする。相手の状況や気持ちを思いやりながら言葉のキャッチボールに努める。そして、相手に投げかける言葉そのものを大事に選ぶ。生徒と教職員がともに、これらの姿勢を守り続ければ、本校のモットーである「Ever Shining」は実現すると信じています。
 特に、様々なことに取り組む中で味わう喜びや幸福感からだけでなく、悲しみや挫折感からも人としての豊かさを身に付けていく生徒にどのような言葉をかけるか。これまでずっとそれを気にかけてきました。そのような中で、以前に先輩教員から聞いた話を紹介いたします。
 ある年の愛媛新聞の「つぶやき」欄に、松山市のある母親からの投稿が載っていました。内容は、「県外で一人暮らしの娘が電話口で泣いた。『傷つくことばっかり』」これに対し母親は「傷つけられているのではない。磨かれているのよ。」と諭した、というものだったそうです。そして、その先輩教員は、こう話を続けられました。「自分は磨かれているのだと視点を変えるだけで、今していることが自分にとって、とても意味のあることに変わる。その時々の痛みを、自分を磨き鍛えてくれるものだと考えることこそ大切なのではないか」。投稿者のわが子への言葉かけと、先輩教員の言葉は、「自分を鍛える」という視点を持てば、自分の、人としての豊かさを増すことにつながると改めて教えてくれるものでした。
 宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』に、淡い月光に照らされながら母熊が子熊の思い込みや間違いを一つ一つ丁寧に説明しながら正していく場面があります。生き物は、食べたり食べられたりすなわち命を奪い奪われる中を生きるしかありません。子熊の甘えに調子を合わせたり機嫌をとったりしない母熊の凛とした姿からは、そのような世界に生きざるを得ない子熊に正しく強い生き方を教えておきたいという深い愛情が、切ないほどに伝わってきます。そして、教育もまた、そのような深い愛情と未来を見通した考え方を持って生徒一人一人に向き合うことから始まるのだ、と自分を戒めます。
 多様な未来が広がる生徒たちに、生きる「姿勢」の大事さを、これからも「授業時間」を通して語りかけます。



令和5年度前期課程修了証書授与式 式辞

2024年3月20日 10時06分

 3月19日(火)、第3学期終業式の後、体育館にて第3学年生徒の前期課程修了証書授与式を行い、次のような式辞を述べました。

 春の光が満ちあふれる季節となりました。本日、保護者の皆様をお迎えして令和5年度愛媛県立松山西中等教育学校前期課程修了証書授与式を挙行できますことは、この上ない喜びであります。
 保護者の皆様には、お子様が義務教育を修了され、たくましく成長されましたことに対しまして、心からお喜びを申し上げます。
 ただ今修了証書を授与いたしました159名の皆さん、前期課程の修了おめでとうございます。皆さんは本校の門をくぐって三年の月日の間、世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響を受け、入学直後から授業や学校行事、部活動などの教育活動において様々な制約や制限を余儀なくされてきました。安全・安心のためとはいえ、我慢を強いられながら、戸惑いや不安、落胆や不満、心残りや寂しさを感じた人も多かったことでしょう。
 そのような中にあって皆さんは、困難な状況を受け止め、自らすべきことやできることに真面目に向き合い、やりがいや楽しみを積極的に見出しながら一生懸命に取り組まれました。教室や廊下での友達との何気ない語らい。些細なことに思い悩んだ日々。見聞を広めながら集団生活の在り方を学んだ研修旅行。グループで団結し連帯感を深めた運動会。クラス全員が心を一つにして歌い上げた合唱コンクール。厳しい練習を重ね、勝った喜びや負けた悔しさを仲間と共有した部活動。それらの一つ一つが、皆さんの成長にとって、かけがえのない心の糧となっています。
 皆さんは、四月から義務教育とは異なる制度のもとで、自分の興味・関心の多様化・具体化に合わせ、自らの進路等に応じて必要となる資質や能力を身に付けるための教育を受けることになります。そのため皆さんには、自分の力で立つという意味の「自立」の精神と、自分のことは自分で律するコントロールするという意味の「自律」の精神がそれぞれ求められます。節目となる本日、これからの3年間が充実したものとなるよう、本校が大切にしている校訓を改めて心に留めておいてほしいと思います。
 校訓の一つ目、「誠実」。誠意を持って、人と接し何事にも取り組むということ。自分を大事にしながら他の人も大切にすることを通して心の広い人になってください。
 二つ目、「自学」。自分から学び、判断し、行動する力を身に付けるということ。どのような大人になりたいかを考えながら、自ら人生を切り拓こうとするたくましさを持つ人になってください。今後は学習内容が高度になり、授業の密度もそれに応じて濃くなります。ですから授業はもとより、家庭での予習・復習などにも自ら進んで取り組みましょう。
 三つ目、「創造」。自分や他の人にとっても喜びとなるものを創り出すということ。失敗を恐れず挑戦し続けてください。蓄音機や白熱電球などの発明によって人々の生活を一変させ、「発明王」と呼ばれたトーマス・エジソンは、「私は失敗したことがない。ただ、一万とおりの、うまくいかない方法を見付けただけだ」という言葉を残しています。失敗は成功と等しい価値を持つのです。皆さんには、それぞれ自分にしかない個性があり、可能性を秘めています。本校の後期課程に進む人も、新天地に向かう人も、自らの個性を発揮し、可能性に勇気を持って挑戦してください。
 結びになりますが、保護者の皆様、お子様は義務教育とは異なる制度のもとで、自立した大人へと成長していくこととなります。心の優しい生きる力を持った社会人に育つことは、御家庭と学校の共通の願いです。ここにあらためて、本校の教育活動に対する御理解と御支援を賜りますようお願いを申し上げ式辞といたします。

令和6年3月19日
 愛媛県立松山西中等教育学校長
  佐々木 進

第3学期終業式 式辞

2024年3月20日 09時58分

 3月19日の朝、本校体育館にて、第3学期終業式を行い、全校生徒に次のようなエールを送りました。

 おはようございます。今年度もあと少しとなりました。皆さんにとってどのような1年間であったかを振り返ってみてください。
 さて、「反省」という言葉から何を思い浮かべますか。反省とは本来、自分の言動の良くなかった点や過ちを認め、それを改めるためにどうすればよかったのか、今後どうすべきかを考え、自分を変えることをいいます。自分の非を認め、自己嫌悪を感じたり正直に謝ったりするのはとても大事なことです。ただ、それだけでは反省として十分ではなく、自分の考え方や行動を変える努力をすることが本当の反省です。「反省を生かす」というのは、自分の生き方を変えるということなのです。もちろん、すべてを一度に変えるのは簡単なことではありません。私の場合、自分にとって優先順位が高く取り組みやすいことを選び、それを習慣になるまで繰り返しています。
 今年度の終わりに当たり、児童文学の古典的冒険小説ともいわれる『宝島』を書いた、イギリスの小説家・ロバート・スティーヴンソンについて話をします。『宝島』という小説は、現在の人気漫画『ONE PIECE』と比較されることも多く、皆さんの中には読んだことがある人もいるかもしれません。本校の図書館にも置いてありますので、ぜひ読んでみてください。おもしろくて物語の世界の中に引きずり込まれます。
 そのスティーヴンソンが、次のような言葉を残しました。「毎日を収穫によって判断してはならない。いかに種をまいたかによって判断しなさい。」私たちは何かに取り組みながら、目先の収穫すなわち目に見える結果を求める余り、結果が出ないと、やる気を失ったり途中であきらめたりすることがあります。そのような私たちに、スティーヴンソンの言葉は大切なことを教えてくれます。種をまかなければ、収穫は得られないこと。今は収穫がなくても、まいた種がいつか実って収穫を得られるかもしれないこと。だから一日一日を、その収穫ではなく、どれだけ種をまいたかで判断すべきであること。そして、「種をまく」という言葉を、「努力をする」という言葉に置き換えてみてください。すると、「毎日を収穫によって判断してはならない。いかに種をまいたかによって判断しなさい。」というスティーヴンソンの言葉が、わかりやすく胸の中に染みこんできます。
 これからも皆さん一人ひとりが、自分の夢に向かって心と体を動かし、一生懸命に種をまき続けることを期待して、令和5年度第3学期終業式のあいさつとします。

学校新聞第32号「卒業生に贈ることば」

2024年3月16日 09時55分

 先の3月1日に挙行した卒業証書授与式後、卒業生たちの進路が決まり始めています。本校の学校新聞第32号への寄稿文「苦みや雑味を味わう」を載せ、改めてエールを送ります。

 第16期生の皆さんは、世界的なコロナ禍の中、強い自制心と精一杯の努力によって立派に成長されました。そのような皆さんに、令和2年3月22日付の朝日新聞の「声」欄に掲載された、ある中学生の投稿を紹介します。「休校で気付いた 学校に行く意味」というタイトルが付けられ、こう書かれていました。
 「今、学校生活と大きく違うのは『嫌い』なものに触れなくなった点だ。学校に行けば苦手な人と顔を合わせ、嫌いな教科も学び、時に退屈な時間を過ごすこともある。でもその苦みや雑味も含めた日々は、何にも代えがたい味わいがある。」「好きなものばかりを選び取るのは良くないこと。学校では勉強だけでなく、人との関わりや課題を乗り越える力、生きていくために必要な力も学ぶのだと、休校体験から気付いた。」
 卒業生の皆さんは、これからも時折、様々な「苦み」や「雑味」を経験するでしょう。でも、それらを、「嫌い」なものとして避けたり取り除いたりするのではなく、自分にとって「何にも代えがたい」必要なことの一つとして味わい尽くそうとすれば、そのとき、皆さんの人生はより豊かなものになっているはずです。

令和5年度 第7回陽光祭 あいさつ

2024年3月13日 19時35分

 3月12日(火)と13日(水)の2日間、令和5年度 第7回陽光祭を開催し、1日目は校内合唱コンクールと展示・催しもの準備、2日目は陽光祭にて「探究の時間」優秀者発表やステージ発表、展示・催し等を実施しました。校内合唱コンクールと陽光祭それぞれの開・閉会式にて、次のような話を生徒にいたしました。

【12日:校内合唱コンクール】
 〔開会式〕
 皆さん、おはようございます。前期生による校内合唱コンクールと、後期生の有志による合唱発表が行われます。これまで授業や早朝に教室から練習の歌声が聞こえていましたが、その度に、さわやかでうれしい気分になりました。私も大学の4年間、サークル活動で歌っていて、コンサートや演奏旅行、ボランティア活動をしていました。ですから歌声を聞くと、とても幸せな気持ちになります。
 人間の声には人の心を揺さぶる力と美しさがあります。皆さんがこれまで、クラスメイトや仲間と一生懸命に気持ちを合わせて練習をしてきた成果を存分に発揮してください。楽しい歌はもちろんですが、悲しい歌であっても歌うことの根底には喜びがあります。歌う喜びにあふれた皆さんの姿を見られることを期待して開会のあいさつとします。
 〔閉会式〕
 皆さん、どれもすばらしい歌声と伴奏による素敵な発表でした。声の重なりの透明感や輝きがとても美しく感激しました。合唱はいいですね。ありがとうございました。
 そして、各学年の最優秀となったクラスの皆さんと、首席指揮者賞、首席伴奏賞を受賞された皆さん、本当におめでとうございます。技術的に素晴らしいのはもちろんですが、音楽に対する真摯な気持ちや熱意、仲間と一緒に音楽をつくる喜びが伝わってきました。心から拍手を送ります。
 一人ひとりが心を合わせたとき良い合唱ができると言われます。一方で、良い合唱ができたとき一人ひとりの心が一つになるとも言われます。合唱コンクールを通じて、2つの言葉の意味の微妙な違いを理解し、2つのことをいずれも実感した人は、大事なことを学んでいます。今後、様々な学校行事や部活などで他の人と一緒に何かを成し遂げようとするとき、2つの言葉を思い浮かべながら一生懸命に取り組んでください。皆さんが、合唱コンクールで体験したことや学んだことを、これからの活動に生かすことを願って閉会のあいさつとします。

【13日:陽光祭】
 〔開会式〕
 皆さん、おはようございます。昨日の、前期生による校内合唱コンクールと後期生の有志による合唱発表は、それぞれ見事なものでした。審査をしてくださった本校同窓会長の長野様は、皆さんの歌声や態度のすばらしさにとても感動なされ、「生涯にわたって忘れられないほどの合唱を聞かせていただき、ありがとうございました。」とまで仰ってくださいました。
 本日の陽光祭も、「煌(きらめき)~駆け抜けろ 新時代~」のテーマのもと、皆さんの表情が生き生きと輝き、笑顔あふれ、青春の思い出となる一日にしてください。
 本校の校歌の2番の歌詞に、「風は光りぬ」という言葉があります。「風が光る」という表現を何となくわかる気がすると思う人は、身の回りの美しいものや美しいことによく気が付き、美を求め、美に親しむ気持ちの強い人だと思います。陽光祭の様々な企画を楽しみながら、展示作品や舞台発表のすばらしさや美しさを感じることはもちろんのこと、生徒たちの、おもしろいアイデアを生み出す柔軟な発想や、難しいことにチャレンジする勇気、練習や準備に一生懸命に取り組み続けた姿勢、それらからにじみ出る「美しさ」にも気付いてほしいと思います。
 そして今日はもう一つ皆さんにお願いがあります。インフルエンザなどの感染症が広まっています。どうかマスクの着用や手指消毒、換気など基本的な感染対策を心がけてください。
 終わりに、創立50周年の記念展示として「『久万ノ台古墳』里帰り展」を企画したところ、松山市立埋蔵文化財センター様が多大な御協力をしてくださいました。「節目の年に本校の生徒や教職員が校舎の立つこの地のいにしえに思いをはせ、新たなスタートを切る。」埋蔵文化財センターの方々がそれを願ってくださってのことと存じ、心からお礼を申し上げます。皆さん、ぜひ周年記念展示にも足を運んでください。以上で開会のあいさつとします。
 〔閉会式〕
 皆さん、陽光祭を十分に楽しみましたか。どの企画もアイデア豊かな工夫が凝らされ、一生懸命に練習や準備がなされたことの分かる、とてもすばらしいものでした。それぞれの企画をされた皆さんに、感謝の気持ちを一杯込めた拍手をおくります。
 開会のあいさつの中で、今日はいろいろな「美しさ」に気付いてほしいと話しました。演奏やパフォーマンス、展示作品そのものの美しさ。模擬店や体験にて来訪者や参加者に喜び楽しんでもらおうと努力する、その気持ちの美しさ。友達が頑張っている様子を見て自分もうれしそうにしている人の、心の美しさ。この陽光祭で、たくさんの「美しさ」を感じ取ることができました。
 美しさ(美)に接すると、気持ちが和らぎ、温かくなり、前向きになります。今年度の陽光祭は終わりますが、どうか身の回りにある、美しいものや美しいことに気づき、美を求め美に親しむ気持ちをこれからも大事にしてください。
 終わりになりましたが、陽光祭の準備や運営をしてくださった皆さん、ありがとうございました。また、開会式でも申し上げたように、松山市立埋蔵文化財センターの職員の皆様には本校の生徒や教職員のためにお力添えを賜り、深く感謝申し上げます。お世話になったすべての方々に改めて心からお礼を申し上げ、閉会のあいさつとします。

令和5年度卒業証書授与式 式辞

2024年3月1日 16時12分

 3月1日(金)、暖かい晴天のもと本校体育館にて、令和5年度(第16期生)愛媛県立松山西中等教育学校卒業証書授与式を行い、式辞を述べました。

 校庭の木々の芽も膨らみ、暖かい春の訪れが感じられる今日の佳き日に、本校を見守り支えてくださっている、PTA会長の菅野雅之様をはじめ御来賓の方々、保護者の皆様の御臨席を賜り、令和5年度愛媛県立松山西中等教育学校卒業証書授与式を挙行できますことは、我々教職員一同にとりまして大きな喜びであります。厚くお礼を申し上げます。
 ただ今、卒業証書を授与いたしました138名の皆さん、卒業おめでとうございます。拍手を送り、お祝いを申し上げます。また、保護者の皆様には、お子様の御卒業、まことにおめでとうございます。大切に慈しみ育ててこられたお子様が、このように立派に成長され、本日ここに卒業の日を迎えられましたこと、感慨もひとしおのことと拝察いたします。心からお喜びを申し上げます。
 さて、卒業生の皆さんは、2年生の冬から春にかけて世界的流行が始まった新型コロナウイルス感染症の影響を受け、授業や学校行事、部活動などの教育活動において様々な制約を余儀なくされてきました。皆さんの安全・安心のためとはいえ、我慢を強いられる中で戸惑いや不安、落胆や不満、心残りや寂しさを感じた人も多かったでしょう。中等教育学校時代が生徒にとって子供から大人へと成長する貴重な時期であることを知る私たち教職員にとっても、焦り、悩み、試行錯誤しながら皆さんと共に歩んだ6年間でした。
 そのような中にあっても皆さんは、困難な状況を受け止め、自らすべきことや、できることに真面目に向き合い、やりがいや楽しみを積極的に見いだしながら一生懸命に取り組まれました。私は、皆さんのそのような様子を聞いたり、様々な活動において自制心と精一杯の努力を怠らない皆さんの姿を見たりするたびに感心し、頼もしく思ってきました。誰も経験したことのない「コロナ禍」を乗り越えてこられた皆さんです。これからも自信をもって前へ進んでください。
 本校は今年度、松山西高等学校創立50周年と、松山西高校内に中学校が併設されて松山西中高一貫教育が誕生してから21年目を、それぞれ迎えました。皆さんはその記念すべき年の卒業生です。創立50周年記念事業の統一テーマである、「繋ぐ 半世紀の軌跡 - 革新と伝統の共存へ- 」の言葉のとおり、本校で築いてきた「師弟同行」と「開拓者魂」の伝統精神を、皆さんによって、これからさまざまな所で、新たな形で繋いでほしいと願っています。学校の伝統精神は、教育活動の中に息づくだけでなく、生徒が卒業後もそれらの精神を心の中に持ち、人生の様々な場面において生かし続けることによって、時代を超え、また時代とともに変化しながら揺るぎのないものとなります。
 皆さんが社会の中核を担うころには、まるで地図のない原野を試行錯誤しながら手探りで進んでいくような時代となるでしょう。私たちは、自分で道を切り拓いて進むしかありません。一方で、人が後悔するのは、「したこと」ではなく、「しなかったこと」です。自分で何かをしようと決心し、一歩目を踏み出すことから全ては始まります。皆さんには、師弟同行の精神と開拓者魂を胸に、一歩、二歩と踏み出し、歩き続けてほしいと思います。
 終わりになりましたが、保護者の皆様には、長い間、本校を温かく見守ってくださり、多大なる御支援と御協力を賜りましたこと、深く感謝を申し上げます。卒業生の皆さん。児童文学作家の斎藤隆介が『花さき山』という童話を書いています。その山では、人間が思いやりの気持ちをもって優しいことを一つすると美しい花が一つ開きます。そして、山にはそのようにして咲いた花が一面に広がっています。この作品は、優しい行為が気高く美しいものであること、多くの人が見返りを求めることなくそのような行いをしていて、どこかで花を咲かせていることを教えてくれます。優しいことをした者、された者、それを知った者、それぞれの心の中に「花さき山」はあるのかもしれません。皆さんと過ごした一年間で、私の中に、皆さんの優しさによって開いた花がいくつもあります。
 皆さんがこれから、一人ひとりに与えられた場所でそれぞれの役割を精一杯果たし、自分らしい人生を誠実に歩まれることを願い、皆さんの御多幸と御活躍をお祈りし式辞といたします。
   令和6年3月1日    愛媛県立松山西中等教育学校長 佐々木 進

6年生激励会(五鶴贈呈式)あいさつ

2024年1月11日 19時54分

 1月11日(木)、本校体育館にて、6年生激励会(五鶴贈呈式)を行い、大学入学共通テストを間近に控えた生徒たちに、私からは次のような言葉をかけました。

 おはようございます。6年生の皆さんが、自分の進路実現のために努力を続けてきたことや、1月13日と14日に行われる大学入学共通テストに向けて頑張っていることを、先生方から聞いています。私も、自分のスケジュール帳に「共通テスト」と大きく書き込んで、皆さんを見守ってきました。
 そのような皆さんに、二つのことを話してエールを送ります。まず、今日と試験当日を含め「まだ3日間ある」ということです。重要な内容や苦手な箇所を復習する時間は十分にあります。私の知り合いの話ですが、大学受験の朝、会場に向かう電車の中で、受験雑誌の付録であった「直前チェック」という綴りをたまたま見直したのだそうです。すると、そこに載っていた内容が試験に多く出題されていたらしく、「電車の中の直前勉強のおかげで合格できた」と真面目な顔で言っていました。今日からの3日間を大事にし、試験に備えてください。
 受験では自己管理と自分で判断し責任を持って行動することが求められます。ですから、「受験は自分を高めるチャンスだと思ってほしい」、これが皆さんに伝えたいもう一つのことです。そのように受験をとらえれば、気持ちが少し前向きになります。皆さんの中には、心配をしたり不安になったりしている人がいるかもしれません。でも大丈夫です。誰もがそのような気持ちになるものですし、適度な緊張感は集中力を高める効果があり、むしろ必要なものです。
 6年間の学習で身に付けた学力と、これまでの努力に自信を持って試験に臨んでください。皆さんをいつも応援しています。

第3学期始業式 式辞

2024年1月6日 18時33分

 1月6日(土)、体育館で第3学期始業式を行い、式辞として次のような話をいたしました。

 皆さん、おはようございます。冬休みは休養をとりながら充実した毎日を過ごし、新年を元気に迎えましたか。そうであれば、とてもうれしいです。
 その新年の喜びを、驚きと悲しみに変えた出来事がありました。元旦に発生した「令和6年能登半島地震」では、多くの人が亡くなられ、安否不明となっています。命を落とされた方の冥福を祈り、被災された方々にお見舞いの気持ちを届けたいです。そして、震災に遭われた方のことを忘れず、何をすべきかを考えています。また、1月2日に起きた羽田空港での飛行機事故においても、亡くなられた隊員の方に哀悼の気持ちを捧げ、事故に遭われた方々にお見舞いを伝えたい思いです。もし、「小さな誤り」が「大きな事故」につながったのであれば、とても残念なことです。
 さて、2学期の終業式では、皆さんに実行してもらいたいことを二つ話しました。一つは、目の前の人に対して、何気ない振る舞いや表情、言葉づかいや言葉そのものを大事にして、小さな善い行いを心がける、ということ。二つ目は、関係がうまくいかない人と一緒に何かを行わなくてはならないとき、相手が変わるのを待つよりも先に、自分の受け止め方を変えてみる、ということです。このような心の持ち方をすると、自分の気持ちが軽くなります。
 そのこととも関連して、今年の始まりに当たっては特に、勉強や部活動などで努力を続けている皆さんに心がけてほしいことを話します。それは、相手の気持ちを「想像する」ということです。いつも自分のことばかりを考え、自分を優先していると、相手の気持ちや状況などを想像できる、心の広さや深さがなくなります。皆さんには、誰かが、皆さん自身の気持ちや状況を想像してくれた上で、自分に寄り添った言葉かけや行動をしてくれた、という経験はありませんか。私は、ありました。そして、その人を尊敬し、憧れ、自分もそうありたいと強く思いました。「自分がされて嫌なことは人にしない。自分がされてうれしいことを人にもする。」これは、人間の大切なルールの一つです。
 本校第1教棟の玄関脇に大きく掲げられている重点努力目標、「Ever Shining ― 夢に向かって心と体を動かし、みんなを輝かせる人であれ ―」。この言葉のとおりに、皆さんが夢の実現のために、自分の心を動かして相手の気持ちや状況を想像し、体を動かして努力を続けることを願い、応援して、第3学期始業式の式辞とします。

第2学期終業式 式辞

2023年12月20日 15時54分

 12月20日(水)、体育館で第2学期終業式を行い、全校生徒と教職員に次のような話をいたしました。

 皆さん、おはようございます。最近、驚いたことがありました。1か月くらい前に新しい洗濯機を買ったのですが、乾燥作業が終わって洗濯物を出すために蓋を開けると、「すぐ取りに来てくれてありがとう」と表示されます。驚いたのは機能そのものではなく、そのように自動的に設定された感謝の言葉であってもうれしくなり、次もすぐに取りに来ようという気持ちになったことにびっくりして、とても不思議な感覚にとらわれました。もちろん、私がそう感じただけで、誰もが同じように思うわけではありません。一人ひとり、モノの見方や受け止め方は異なります。
 さて、そのように、人によって感じ方や考え方、能力などが違う中で、私たちは常に誰かと関わり、折り合いを付け、様々な目的を達成しながら生活しています。実はそこに、喜びや楽しみだけでなく悩みや不満も生まれてしまう原因の一つがあります。例えば、クラスメイトや部活動の他の部員との関係において、仲良くすべきだと思っていても、つい自分を他の人と比べて悩んだり、他の人が自分の思いどおりにならずに不満を持ったりします。しかも、それを心の中に抱え続けていると自分自身が辛くなり、場合によっては、周りの人の心を傷つける言動をとってしまうことがあります。
 皆さんの中に、自分を誰かと比べてしまって自信がもてずにいる人や、相手との関係をうまく保てずに困っている人はいませんか。そのような人に、特に参考にしてもらいたい、心の持ち方を二つ話します。
 一つ目は、1学期の始業式でも話したことですが、目の前の人に対して、何気ない振る舞いや表情、言葉遣いや言葉そのものを大事にする、そのような小さな善い行いを心がける、ということです。もし、あなたが誰かに笑顔で言葉をかけたことによって、声をかけられた人の心が明るくなり、その人が少しでも前向きな気持ちになったとすれば、それだけで、あなたの人生には意義があるのです。どうか、自信を持って小さな善い行いを続けてください。
 二つ目は、関係がうまくいかない相手と一緒に何かをしなくてはならないとき、相手が変わるのを待つのではなく、自分の受け止め方を変えてみる、ということです。相手なりに一生懸命なのでは、何か理由があるのでは、問題や課題を抱えているのではと、相手のことを思うようにすると、自分の気持ちが冷静になり、やがて自分の言動が変わり、それによって相手との関係がよい方に向かった経験が、私にはあります。
 皆さんには、今話したことを参考にしてもらいながら、この冬休みの間に、人との接し方について考えてほしいと思います。そして、感染症対策をはじめ、体調には十分に気を付けて、よい年を迎えてください。特に6年生は、自分の進路実現のために、丁寧に時間を使ってください。3学期の始業式で、皆さん全員と元気な挨拶を交わすことを楽しみにしています。