令和7年度前期課程修了証書授与式 式辞
式辞。ここ久万ノ台に本格的な春の訪れが感じられる季節となりました。本日、保護者の皆様をお迎えして、令和7年度愛媛県立松山西中等教育学校 前期課程修了証書授与式を挙行できますことは、私ども教職員一同にとりまして、大きな喜びであります。
保護者の皆様におかれましては、お子様が義務教育を修了され、心身ともにたくましく成長されましたこと、心からお喜びを申し上げます。また、この間、本校の教育活動に対し、多大なる御理解と御協力をいただいておりますこと、厚く御礼申し上げます。
ただ今、修了証書を授与いたしました160名の皆さん、前期課程の修了おめでとうございます。皆さんが本校に入学した令和5年度は、5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変わり、学校に日常が戻ってきた年でした。大洲の集団宿泊研修では、お互いの距離が一気に縮まりました。グループマッチや運動会、陽光祭といった行事、部活動において、賢く、優しく、たくましい先輩方の背中を追いかけました。いつしか、自分たちも先輩と呼ばれるようになり、戸惑いながらも、心を砕いて導いた下級生たちの成長に、自分たちのリーダーシップが伸長した手ごたえを感じました。本年度の運動会や合唱コンクール、陽光祭における、前期最高学年としての振る舞いは、十分以上のものでした。どうか、自信をもって、後期課程へ、また、新たな進路へ進んでください。
さて、ここで、「義務教育」という言葉について改めて考えてみたいと思います。その意味は、「小学生や中学生に当たる年齢の人には、学校で勉強しなければならないという義務がある」ということでしょうか。そうではありません。我が国の教育の理念を定めた「教育基本法」の第5条には、「国民は、その保護する子に、普通教育を受けさせる義務を負う。国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、その実施に責任を負う。」と定められています。義務を負っているのは、大人であり、子どもにとっては、教育を受ける権利であります。そして、教育の内容は、国民としての基礎となる共通の力を、全国一律で育成するものとなっています。
では、高校教育の段階は、どのように異なるのでしょうか。最大の違いは、「選択」を多く伴うことにあります。一般的な中学校を卒業した場合、高校に進むかという選択、高校を選ぶ選択、学科を選ぶ選択などの選択に直面します。私たち中等教育学校の生徒は、既に、入学時に大きな選択を経験したわけですが、後期課程に進むにあたっても、様々な選択があります。既に、皆さんは、「文理コース」「国際コース」の選択を経験しました。今後は、文系・理系の選択がありますし、教科や科目を選択していき、最終的には、6年生の時に進学先等を選択することとなります。
私は、「進路の手引き」の巻頭言において、フランスの哲学者サルトルを紹介しました。サルトルは、「ペーパーナイフと人間のちがいは何か」という問いを投げかけています。ペーパーナイフは、作られる前に「紙を切る」という目的があって、そのうえで作られています。これに対して人間には、先立つ目的はありません。サルトルは、人間はまず存在し、人間にとっての目的は、個々の人間が、自ら選び取り、自ら作り出してくものであると説きます。進路指導に携わる教師としては、ペーパーナイフの話にはうなずけるところが多いと感じています。皆さんには、今後、自らの人生を作る選択を、主体的に積み重ねていただければと願っています。
結びに、皆さんが本校卒業後の大いなる自己実現を見据え、たくましく成長していくことを期待しますとともに、保護者の皆様には、お子様を立派な社会人として世に送り出すことができますよう、引き続きの御理解と御支援を賜りますことをお願い申し上げまして、式辞といたします。
令和8年3月19日 愛媛県立松山西中等教育学校長 中島 康史