学校新聞第34号「卒業生に贈ることば」
2025年3月5日 16時47分 3月1日に発行した松山西中等教育学校新聞に、「みんなちがう みんなおなじ」と題した「卒業生に贈ることば」を書きました。
詩人の金子みすゞ(ず)は、作品『私と小鳥と鈴と』の中で、空を飛ぶ小鳥も、きれいな音を出す鈴も、地面を速く走れてたくさんの唄(うた)を知っている私も、それぞれに備わる、他にはない「よさ」を発揮していると語り、「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい」とつぶやいています。
この詩を初めて読んだとき、多様性の大切さに触れつつ、「ちがい」はありながらも、あることにおいては、みんな同じなのだという普遍性への信頼も込められていると感じました。そして、ソプラノやテノールなどの各声部が独立したメロディーとなって対等に絡(から)み合いながら協和し、透明で美しい響きが広がるポリフォニー(多声音楽)を思い浮かべました。この世に奇跡的に存在し、誰一人として同じ者のいない私たちには、それぞれに「その人らしさ」が備わっています。誰もが、「鈴や小鳥や私」のように自分らしさを発揮するとき、すなわち、一人ひとりちがう生活を丁寧に過ごすとき、その人にしか出せないメロディーが奏でられているのでしょう。それらを重なり合わせ、人間としての壮麗なポリフォニーを響き渡らせるために、「ちがい」は与えられているのかもしれません。
卒業される第17期生の皆さん、自分らしさを失わず一日一日を大切にしてください。