松山西PTA会報「にし」掲載文
2025年3月7日 08時54分3月1日に松山西中等教育学校PTAが発行した会報に、「小さなこと」と題した文章を書かせていただきました。
保護者の皆様には、平素から本校の教育活動に御理解と御協力を賜り、厚くお礼申し上げます。また、創立50年の周年期間である昨年度と今年度は、様々な行事等にお力添えくださり重ねて感謝申し上げます。
さて、昨年3月発行の会報に、式や紙面での挨拶の機会を、生徒に語りかけられる貴重な授業時間だと思い大切にしていると書きました。本会報をお借りして、普段どのようなことを伝えているかをお示しするとともに、お子様にメッセージを送らせていただきます。
私は自分の力の足りなさを思い知ることがあります。そして、それを繰り返すと何事にも自信をなくし、自分の価値を見失いそうになります。そのようなとき、自分を慰め励ますためにアメリカの詩人エミリ・ディキンスンの言葉を思い浮かべます。
一つの心が壊れるのをとめられるなら
わたしの人生だって無駄ではないだろう
一つのいのちの痛みを癒せるなら
一つの苦しみを静められるなら
一羽の弱ったコマツグミを
もう一度、巣に戻してやれるなら
わたしの人生だって無駄ではないだろう
誰に対してでも、かりに人間以外の動物であっても、「一つのいのち」の悲しみを和らげたり、悩みを軽くしたり、苦しみを静めたりすることができたなら、その人の人生は無駄ではない。そのような、ささやかながらも尊い行いを一度でもしたなら、それだけで、生まれてきた意味はある。例えば、自分が誰かに、「こんにちは」とか、「元気にしてる」とか、「お疲れさま」とか、「ありがとう」と笑顔で言葉をかけたことによって、声をかけられた人の心が明るくなり、その人が少しでも前向きな気持ちになったとすれば、それだけで自分の人生は価値を持つ。そう自らに言い聞かせることで、自分に自信をもてないことから救われました。
多くの人にほめ称えられる成果を上げることが優れているのは言うまでもありません。一方で、日々の暮らしの中で、目の前のひとりの人に対して、見過ごされがちな小さな善行を心がけるのも、同じように素晴らしいことです。むしろ私は、後者の行いやそのような行いを大切にしている人に、深く心を揺さぶられます。エミリ・ディキンスンは、1羽の弱ったコマツグミを巣に戻すという行為に、それを行った者の人生が全肯定されるほどの価値を見出しました。私もまた、大きなことよりも小さなことの中に一層重要なものが包み込まれていると信じて、これからも何気ない振る舞いや表情、言葉遣いや言葉そのものを大切にし続けたいと思っています。
教員は、生徒に伝えたいと思うことが生徒に伝わったとき、無上の喜びを感じます。これからも本校は、教職員一丸となって保護者の皆様と一緒に、お子様の成長を支えてまいります。