家庭クラブ機関誌「銀杏」第36号 巻頭言
2024年3月27日 16時55分 令和5年度の愛媛県立松山西中等教育学校家庭クラブ機関誌『銀杏』第36号を発行しました。巻頭言において、本校の家庭クラブ員の生徒たちに、「銀杏の樹に向けられた思いやり」と題したメッセージを送りました。
11月中旬、家庭クラブ員の生徒たちが朝清掃をしている様子をうれしく眺めながら登校しました。生徒の皆さんは、正門から正面玄関にかけてそびえている銀杏の黄色く紅葉した落ち葉を集めてくれていました。その銀杏の樹にまつわる話を紹介します。
本校第8代校長の松岡繁先生は、『創立30周年記念 久万の台 第28号』(2004年3月)に「思い出すこと」と題した文章を寄稿なされ、次のように書かれています。
「銀杏や楠の落葉高木、常緑高木の新緑が校内を彩るのが印象深かったことを思い出しております。それは、生気みなぎる西高の姿であったのかもしれない。(中略)それらの木々の中でも、私は感銘を受けたある話柄がありました。それは銀杏の根元が高く盛り上がっているので、以前に勤務していた方に尋ねたところ、こういうことでありました。銀杏の生長が遅いので調べてみると、根元に水分が多くて育たない、そこで木を吊り上げて高くし、土を盛ったというものでした。私はこの話を聞くにつけても、草創期の方々の学校を思う心、生徒を思う心が、銀杏の木にも向けられた出来事として、心温まる思いがしたものでした。」
その根元が盛り上がった樹々の周りで朝清掃をしている生徒の姿を見て、松岡先生が書かれた話を思い出しました。そして、学校や生徒への思いを銀杏の樹にも注いでくださった方々の心に、生徒たちが感謝の気持ちで応えているかのように感じました。
家庭クラブの4つの基本精神である「創造」「勤労」「愛情」「奉仕」に共通するのは、家庭や学校から地域、社会へと広がっていく人とのつながりの中で、常に思いやりの心を持つということです。かつて、ある年の愛媛県ホームプロジェクトコンクールに提出された作品を一つひとつ見ていった経験があります。どの作品も豊かな発想力と地道な努力が成果となってあらわれたすばらしいものでした。中でも、家族の幸福を願う気持ちを動機としてテーマを設定し、研究をとおして家族の意識が変わり絆も深まったことを報告した作品や、地域の重要課題を自分の課題ととらえ、地域の人たちと連携しながら、高校生の視点で解決策を見いだしたいというエネルギーにあふれた作品などが、特に印象に残りました。
私たちは皆、一人の生活者として食物や被服をはじめとした生活に必要な知識と技能を習得するとともに、生涯にわたってよりよい人間関係を創る実践力を身に付けていかなければなりません。そのために生徒の皆さんは、家庭科の授業や家庭クラブでの活動を通して、それらを学んでいるのです。
結びに、機関誌「銀杏」第36号の編集をはじめ、多くの活動に熱心に取り組んでいる家庭クラブ員の皆さんに深く感謝するとともに、本校の家庭クラブ活動の一層の充実と発展を期待しています。