お知らせ

 

 校長   佐々木 進


 愛媛県立松山西中等教育学校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
 本校の前身は、昭和49年に創立された愛媛県立松山西高等学校です。前年の昭和48年に起きた世界的な石油危機の影響によって開校当初はプレハブ校舎しかなく、生徒たちは、荒れた運動場を教職員と一緒に整地するなどしながら、「新しい学校を自分たちで創る」という「開拓者精神」を発揮しました。そして、雨が降ると、トタン屋根のプレハブ校舎がけたたましく鳴り始めるので、これに負けてはならないと教員の声が校舎の外にまで響き渡り、当時は、生徒と教職員が同様に、不自由な思いよりも新たな学校建設への熱気に包まれた毎日であったといいます。
 その後、生徒と教職員が力を合わせて創り上げた松山西高等学校の歴史と伝統を受け継ぎつつ、平成15年に愛媛県立松山西中学校が併設され、平成18年に、中予地域の県立学校で唯一中高一貫教育を行う、現在の愛媛県立松山西中等教育学校となりました。先述の、創立時に育まれた開拓者精神と、高い理想を求めて生徒と教職員が共に汗を流す「師弟同行」の精神は、今も学校のモットーとして様々な教育活動の中に息づいています。
 本校は、1学年4学級で前期課程3年間と後期課程3年間の計6年間を一貫して学ぶ中等教育学校です。「誠実・自学・創造」の校訓のもと、豊かな心と知性を身に付け、高い志を持って、未来を拓く若者を育成する、という教育方針の中で、生徒たちは1年生から6年生までの幅広い年齢集団の中で自分の「学び」を深め、高め合いながら、たくましく成長しています。授業や学校行事、部活動などを通して自らの夢や希望をかなえようと努力している生徒たちの輝きと伸びゆく力を、これからも教職員全員で守り支え続けてまいります。
 
  令和5年4月

ブログ

生徒の皆さんへのエール(令和5年度「進路の手引き」巻頭言)

2023年8月9日 08時11分

 生徒の皆さん、どのような夏休みを過ごしていますか。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、熱中症などに十分注意して、健康で有意義な夏休みにしてください。
 第1学期に令和5年度「進路の手引き」を皆さんに配布し、その巻頭言とてして、「『出会うこと』と『学ぶこと』」と題したメッセージを書きました。学校HPに載せ、皆さんにエールを送ります。

 小学4年生だった私が、図画工作の授業で風景を描いていたときのことです。絵の具のチューブから青色をパレットに出し、それをそのまま下絵の空の部分に塗ろうとしました。すると、そばにおられた先生が私に、「空はその青色かなぁ。よく見てごらん。」と仰ったのです。改めて空を見上げると、絵の具の青色ではなく、くすんだ白や紫がかった青などが絶妙に溶け合い、グラデーションを成している様子が目の前に広がっていました。そのとき初めて、空を美しいと思いました。
 また、高校1年生のときの英語の授業でのことです。responseという英単語が教科書に載っていて、先生は、単語の意味が「応答」とか「反応」であることを説明された後、もう一つの英単語を教えてくださいました。それは、responsibility、日本語では「責任」と訳される単語でした。そして、次のような話をなされました。responsibilityは、responseとabilityが組み合わさった単語であり、abilityとは「~ができる力」という意味をもつ。つまり、責任とは、「応答・反応できる力」のことをいう。だから、誰かから自分に何らかの働きかけがあった場合は、応答したり反応したりしなくてはならず、私たちにはその責任がある。私は、話を聴きながら、人間の在り方と言葉の成り立ちとが深く関わっていることに感動するとともに、あいさつを交わすことや人と誠実に向き合うことの大切さを再認識しました。
 ここに紹介した話の他に、これまでの多くの経験を通して、私は二つのことを確信しています。一つ目は、人や物事との出会いによって人生は豊かになる、ということです。私の考え方や生き方は、図画工作や英語を教えてくださった先生をはじめ、これまで出会った多くの人と、その方たちに教えられた物事の影響を受けてきました。二つ目は、気付かなかったことに気付いたり知らなかったことを知ったりすること、すなわち「学ぶこと」は楽しいということです。頭の中の世界が広がり、心の中の知識や感情の引き出しが多くなれば、いろいろな年齢や立場の人とも話が通じ合い、相手の気持ちを想像して思いやりのある言動がとれるので、生活の中に喜びが増えます。今も学びたいことがいくつかあり、その一つは、京都大学で研究されている「不便益」についてです。「便利」が、手間がかからず、頭を使わなくても良いことだとすると、「不便」で良かった事や、不便でなくてはならないこと、すなわち「不便の益」を活用するシステムデザインを考案する学問に興味があります。
 皆さんもまた、授業や学校行事、部活動など、さまざまな教育活動をとおして、「出会うこと」や「学ぶこと」の楽しさを経験していることでしょう。それらの中から特に自分が出合いたいことや学びたいことを見つけ、その希望をかなえるために何をすべきかを調べ知り、将来の夢を実現するために努力を続ける、それが「進路を考える」ということです。もし途中で、不安や焦りを感じたり、困難なことや落胆することが続いてくじけそうになったりしても、思うようにならない状況を改善しようと深く考え、時間と手間をかけるのは「不便の益」であり、自分を鍛え磨き夢に近づいていること、と自信をもってください。
 そして、進路について迷ったり、疑問に思うことがあったりした場合には、この『進路の手引き』を手に取り、中でも「先輩からのアドバイス」を読み返しましょう。皆さんには、先輩方のように、悩み、苦労をしながらも、自らの出合いたいことや学びたいことへの思いを強くもち、一日一日、一歩一歩、前へ進んで欲しいと願っています。